お母さんが今、寝た。

「寝られやすくする薬」

と、みんなが言う薬を使って。

何でもいい。

お母さんが、柵を握りしめる時間が少しでも少なくなって、力が抜ける時がくるなら、何でもお願いします。

でも、ギリギリまで薬は使わず頑張っていた時、不意にお母さんが私の頭を撫でて

「美枝ちゃん。綺麗になって。ありがとう。」

といった。

そんなにはっきりした言葉を発してくれたのはここ数日なかったので、うれしくなったのと同時に、急にポロポロ涙も出てきて困ってしまった。

お母さんのことは、何でも急に涙が出てくる。

でも、その後、私の髪の毛を引っ張ったり、私の頭の上で何かを捨てるような仕草もしたので、私の頭を何かと勘違いしたんだろうけど、それでも、その瞬間は、いつものお母さんに戻っていたんだと思う。

一番辛いのは、お母さんやね。

今は変わらずお母さんのうめき声は続いているけれど、それでも静かなお母さんとの大事な時間だ。

仕事といって、今まで何にもお母さんの側にいてあげられなかったこと。この前の入院時では一回もお見舞いに来てあげれなかったこと。

前にお母さんと電話でケンカをした時に、

「お母さんが、私達に出ていけって言うたんやんか。」

と、絶対口に出したら傷つけることをわかっている言葉を発してしまったこと。

全てが悔やまれる。

だけど

今は

お母さんとの大切な時間だ。

一生のうちで、もう2度と来ない、大切な大切な時間だ。

投稿者: 山本 美枝

香川県高松市を中心に活動する、ヨガ、ピラティスのインストラクターです。 エミーライフ株式会社 代表取締役/d.branch studio (ディー・ブランチ・スタジオ) 代表

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